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● 仕組まれた怒り 中国の市民は自分たちの主張が正しいと信じて疑わない(9月18日、四川省成都市) Jason Lee-Reuters
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ニューズウイーク 2012年09月26日(水)15時46分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2012/09/post-2700.php
中国ナルシスト愛国心の暴走
China's Self-Absorbed Nationalism
政府が植え付けた被害者意識と独善的な愛国主義が中国近海の領有権問題解決を永久に遠のかせる
ロバート・サッター(ジョージ・ワシントン大学国際関係学部教授)
[2012年7月18日号掲載]
東シナ海に浮かぶ5つの島と3つの岩礁から成る尖閣諸島。
その領有権をめぐる日中間の対立が再び先鋭化したのは8月半ばのこと。
中国各地では反日デモが起き、メディアやネット上には政府が領土防衛にもっと力を入れ、日本の「不法占拠」に対抗するべきだという声が高まった。
中国ではこれに先立ち、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島の領有権問題でも、政府にもっと厳しい態度を求める世論が高まった。
その声に応えるように、中国政府は武力行使以外のあらゆる手段を駆使して東南アジア関係諸国に揺さぶりをかけた。
ある時は軍事関連施設の設置を検討すると発表し、またある時は経済制裁をちらつかせ、石油開発にも乗り出した。
関係諸国は今のところ有効な対抗手段を取れていない。
ASEAN(東南アジア諸国連合)も足並みが乱れて、中国に対して結束することができずにいる。
外交評論家らが指摘するように、中国の民衆やエリート層が領土問題で政府に厳しい対応を求めるようになったのは、冷戦終結と世界各地における
共産主義の崩壊以降、政府が愛国主義を強力にあおってきた結果だ。
その愛国主義とは、
「中国は19世紀以降ずっと不当に扱われ、列強によって領土や主権を踏みにじられてきた。
今の中国は、自らの支配権を守り、領有権問題の起きている領土や主権を取り戻す力を付ける途上にある」
という被害者意識をベースにしている。
政府のこのプロパガンダが奏功して、民衆とエリート層の間に被害者意識が生まれた。
厄介なのは、毛沢東や小平らカリスマ的な指導者がいなくなり、世論に敏感な集団指導体制が確立した今、民衆とエリート層の意見が外交政策に与える影響が拡大していることだ。
とはいえ、被害者意識は中国当局が育ててきたいびつな愛国主義の一面にすぎない。
それと同じくらい重要なのは、
中国政府が自国民に刷り込んできた
「身勝手に国益を追求する他の大国と違って、中国は国際社会で正義を実践する国だ」
というイメージだ。
■中国の外交は常に正しい?
このイメージづくりを担ってきたのは中国外務省や、対外問題を取り扱う政府機関と共産党機関、政府や党や軍と関係の深いNGO(非政府組織)、そして政府の巨大なプロパガンダ機構だ。
彼らは民衆が政府の外交を高く評価するように仕向けながら、中国の国際的地位向上に努めている。
このため民衆は、中国は国際問題に関して、原則にのっとり道義的な立場を取っていると信じ切っている。
さらに驚くべきことに、
こうした戦略を取ってきたからこそ、中国は外交政策で誤りを認めたり、国際問題への対応で謝罪するような事態に陥らずに済んできた
と思い込んでいる。
一部の外交当局者や専門家は間違いなく、状況をもっときちんと把握している。
彼らは「中国の外交は正しい」というイメージに違和感を覚えているかもしれないが、それを公言することはない。
政府の外交政策について
民衆やエリート層が受け入れる批判は、政府が弱腰過ぎる
というものだけだ。
こうした「正しい国」のイメージが浸透したおかげで、民衆は、中国がアジアや世界で指導的な役割を果たすことも強く支持している。
そして政府が最近力を入れている課題でも、良心的な政策が取られるものと楽観している。
政府が力を入れている課題とは、外国で平和と開発を推進することや、近隣諸国等で中国の影響力を高めつつ支配的あるいは覇権的な態度を取らないこと、領土拡大政策を取らないという王朝時代の伝統を守ることなどだ。
こうした認識と現実の間には大きなギャップがある。確かに被害者意識に関して言えば、中国は19〜20世紀にかけて、列強から抑圧的な扱いを受けた。
だが中華人民共和国の過去60年間の歴史を見れば、道義的で原則に基づく善良な外交が行われたのは例外にすぎないことが分かる。
その政策はむしろ一貫性を欠き、暴力的なことが多かった。
特にその傾向が強かったのは、アジアの近隣諸国に対してだ。
これらの国の多くは、中国の侵攻や干渉を受けた経験がある。
中国政府はクメール・ルージュ(カンボジア共産党)など、近隣諸国の反政府勢力や武力組織を支援して現地政府の弱体化を図った。
冷戦終結後も、近隣諸国は中国による暴力と威嚇外交を忘れていない。
中国政府は懐柔策を試みたが大きな成果はなかった。
最近の南シナ海と東シナ海における中国の好戦的な姿勢は、近隣諸国に昔の中国を思い起こさせている。
問題の一部は、中国のエリート層も民衆も、
自国の暴力と過干渉の歴史をほとんど知らない
ことにある。
だから彼らは、近隣諸国と遠くの大国(つまりアメリカ)がなぜ中国に対して疑念や懸念を抱くのか理解できない。
アメリカに関して言えば、中国の外交にはもうひとつ一貫した特徴がある。
それは域外の大国が中国周辺に強力な影響圏をつくり維持しようとすると、猛烈に反発することだ。
アメリカだけでなく過去にはソ連、それに最近では日本やインドがこうした動きを見せると、中国当局(と体制派のエリート層と民衆)は、冷戦時代の「封じ込め」政策の復活であり中国に脅威を与えるものだなどとして、過剰なほどの反発を見せてきた。
■近い将来の解決は難しい
要するに、中国当局がエリート層と民衆に植え付けてきた愛国主義には2つの特徴がある。
1].中国が大国の犠牲になってきたという意識と、
2].中国は外交において道義と正義を守ってきた
という独特の強烈な意識だ。
このため彼らは、近隣諸国やアメリカとの間で主権や安全保障をめぐる問題が起きると、中国ではなく相手側に原因があると考えるようになった。
またアジアで主権や安全保障が関わるセンシティブな問題が起きて、他国が領有権を主張したり、中国に譲歩を求めたりすることに我慢できない。
中国のエリート層と民衆が、南シナ海と東シナ海の問題に関して、政府にもっと厳しい態度を要求するのにはこうした背景がある。
中国政府のイメージ戦略は見事に成功した。
それだけに中国近海における緊張を緩和するのは一層難しくなったといえるだろう。
これらの問題が近い将来解決される可能性は乏しい。
From the-diplomat.com
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単純にいえば、政府が行なってきた教育による「プログラミング」「洗脳」「刷り込み」の結果にすぎない。
パブロフの犬になってしまった中国民衆には、もはや理性的な判断はできなくなっている。
このままいけば、
「中国のみ正義、他はみな悪」
という思想による拡張主義しかない。
「中国は常に正しい、よって周辺国は中国の言う通りにせよ」
「中国に逆らうものは正義の鉄槌を受ける」
となる。
こういう発想を自ら止める手段を持っていない以上、中国は今後さらなる危険を周辺国に撒き散らすことになる。
このバカバカしいほどの成金主義を止められるのは唯一「日本だけ」しかいない、
ということであろう。
そして、その方法とは
「
中国の論理を受け入れないのは、他国が悪い。
他国を矯正できないのは国政府の弱腰によってもたらされたものである。
よって今の政府はダメで、毅然とした態度のとれる政府に変わるべきだ。
」
ということになり、共産党政府の内乱へと誘導することである。
こういう考え方はいわゆる中国伝統の「正史主義」でもあるからして、中国人の頭にすんなり入っていくものである。
おそらく、日本は中国の熱情を中国国内で高めさせることに意を向けることになろう。
これが外交ゲームである。
自壊要素があるなら、それを大きく育てること、これが外交ゲームである。
中国が今後も拡大主義をを貫き、中華思想でアジアを席巻していくことは眼に見えているが、それは周辺国には耐え難い。
中国はこれからますます強大になり傲慢になっていくだろう。
ソビエト連邦の崩壊を我々は見てきた。
社会不満の蔓延してしている中国が自壊する可能性も大いにある。
情報社会はニュースが一瞬にして広がる。
共産党の崩壊が一瞬にして来ることは、現代にあってはないとはいえない。
このまま、アジア各地で中国の暴腕主義が進行していけば、何処かで破綻がくる。
その歴史的出来事に遭遇できるかもしれない。
その始まりになったキッカケが、今回の事件かもしれない。
『
レコードチャイナ 配信日時:2012年10月2日 10時4分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=65144&type=0
<尖閣問題>
中国の知識人が見た反日デモ
=「わが国からは知日派が失われてしまった」―独メディア
2012年9月20日、独ラジオ局ドイチェ・ヴェレ中国語サイトは記事「
中国の知識人が見た反日デモ」
を掲載した。
尖閣諸島問題を巡って巻き起こった反日デモと暴動について、多くの知識人が自身の意見を発表している。
中国社会科学院農村発展研究所の于建●(ユー・ジエンロン、●は山へんに栄)研究員は、今回の暴動を
「民衆の不満の発散であり、政府は社会秩序が失われた原因と関係者の責任を追究し、メディアはナショナリズムの危険性を検討すべきだ」
と述べている。
芸術家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏は
「中国で最後に起こった『本当の』デモは1989年の天安門広場のデモだった。
今回も自発的な行動に見せかけようとしているが、細かな部分で綿密に計画されていることは明らかで、指導者たちが民意を弄ぶ手法の幼稚さは1960年代を思わせる」
と語った。
香港中文大学の周保松(ジョウ・バオソン)氏は
「国を愛していないわけではないが、この党、この政府のために心から愛することができない。
今の私たちが努力しているのは、いつの日か何の迷いもなく国を愛せる日が来てほしいからだ」
と述べた。
北京大学でメディアを研究する胡泳(フー・ヨン)氏は
「私たちの望みは人々が愛国心によって他国からの抑圧に抵抗することであって、
政府が国民の愛国心を利用して他国を抑圧することではない。
私たちの望みは国が国民を幸せにすることであって、国民が国のために犠牲になることではない」
とコメントしている。
経済学者の許小年(シュー・シャオニエン)氏は
「中国人がこれまで溜めこんできた憤りは、強者から蹂躙(じゅうりん)を受けたからだが、彼らは強者に反抗するのではなく、弱者に向かって発散している。
魯迅先生の描いた阿Qは今でも中国人の典型だ。
同じ国の人間が恐怖で外に出られなくなる愛国など、聞いたこともない」
と批判した。
華東師範大学の劉●(リウ・チン、●は「敬」の下に「手」)教授は
「長年にわたり中日関係は好転と悪化を繰り返し、国内には多くの反日派や、一部の親日派を生んだ。
だが、知日派にお目にかかることはない。
われわれはこの恨み骨髄に徹する隣人について、どれだけ理解しているだろう。
あちらの国民と政府は何を考え、どのような考え方の違いがあるのだろう。
民国期には多くの知日派がいたが、今ではほとんど存在しない。
民族全体がムードに流されるままになっている」
と述べた。
上のような批判や思考が、反日デモに対して何らかの影響があったようには見えないが、一部知識人が社会運動における自身の役割について反省するきっかけとなったようだ。
』
「ここに日本政府に丁重に警告する」
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