2012年9月25日火曜日

なぜ中国のデモは暴力的・非理性的になるのか?:「パブロフの犬」

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●24日、シンガポール華字紙・聯合早報は、暴動化した中国の反日デモについて理性的な愛国には4つの原則が必要だと提言した。写真は12日、北京の日本大使館前で起きた反日デモ。



レコードチャイナ 配信日時:2012年9月25日 11時53分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=64949&type=0

<反日デモ>
なぜ中国のデモは暴力的・非理性的になるのか?
市民社会が欠如が原因―SP華字紙

 2012年9月24日、シンガポール華字紙・聯合早報は、暴動化した中国の反日デモについて
 「理性的な愛国には4つの原則」
が必要だと提言した。

 中国メディアも現在、理性的な愛国を呼びかけている。
 まさにその通りで、 
 民衆が非理性的な圧力で政府を追い詰める
ようなことがあってはならない。
 理性的な愛国には4つの原則が不可欠だろう。

①.第一に理性的に世界を認識すること。
 帝国主義の時代、中国は確かに苦汁をなめたがそれだけではない。
 西洋文明から得たものによって中国は数千年の王朝交替の時代を抜け出し、科学、民主、自由、法治などの価値観も手にした。
 歴史を忘れてはならないが、その利益も知り、長期的視野で世界を受け入れるべきだ。

②.第二に理性的に大局観を持つことが必要だ。
 今の中国にとって民族の復興と近代化の完成こそが大事であり、平和発展戦略こそが外交の要である。
 南シナ海にせよ、尖閣問題にせよ、根本的な解決にはまだ国力が足りない。
 時間は中国の味方なのだ。
 そのことをわきまえよう。

③.第三に理性的に同胞を愛すること。
 同胞の利益を軽んずる者に愛国はできない。
 ということは汚職、職権乱用、毒粉ミルク・ニセ薬品・下水油製造に手を染める者にも愛国は無理である。

④.第四に理性的・文明的な愛国主義にすること。
 今、中国は大国としての台頭を続け、民族を復興させつつある重要な段階にある。
 どのような愛国主義を採用するかは将来、中国がどのような大国になるかを決める決定的な要素となろう。

 21世紀の今、中国の愛国主義は以下のようにあるべきだ。
1. 国内的には立憲政治と自由主義による市民社会を持ち、現代的市民として合格した者が愛国者となること。
2.対外的には寛容と平和を掲げ、善良な理念を世界に伝えることだ。

 中国に非理性的な愛国が広まった根本的な理由は、市民社会の確立が遅れているためである。
 世界史的には国民国家の成立と市民社会の形成は並行して進むもの。
 しかし中国では大きなずれが生じてしまった。
 理性的な愛国の立脚点は市民社会にあり
 中国はその確立の必要があるだろう。


 いわゆる中国人民というのは「パブロフの犬」になっている。
 あるキーコードを与えられると、それに対応するたったひとつのことをするようになる。
 いわゆる、全人民が同じ条件反射をするように躾けられているということである。
 現代用語なら「プログラミング」であり、政治言語なら「洗脳」であり、生物用語なら「刷り込み」である。

 中国においてその行動は暴力がともなっても「愛国暴力は無罪」という免罪符までついている。
 理性的に考えるという枠組みがそのところだけスポッと除外されている。
 よって「反日」というパブロフの犬は、止めを知らない暴力の底へ向かっていく
 ここでは「理性的に考えろ」という呼びかけは虚ろにしか響かないようになっている。
 そうなるべく、小さい時から教育として日々、身体と心と脳に叩きこまれてきたものである。
  これまでは、それが抑制された形で発現していたし、政治権力がそれをコントロールできていた。
 しかし、不景気の到来による社会不安の増大とインターネットという情報ネットワークの成立によって、
 もはや権力の統治は効かずに全国に一瞬に広がる危険性をもってきた。
 洗脳された全人民が同じ行動をするように躾られたパブロフの犬は、その凶暴性からからして究極には飼い主には刃向かうことになる。
 つまり、反日が
 「民衆が非理性的な圧力で政府を追い詰める
ことになってくるのである。
 現在の中国ではこのパブロフの犬の非理性的に教育された圧力が当局に向かうという悪夢に悩まされはじめてきているということである。
 政府当局共産党は自分が長年にわたって仕組んだことではあるが、
 その成長したゾンビにこれから対処していかねばならなくなってきている。

 反対側からみればそこが中国の経絡秘孔ということになる。
 そこを上手に突いてやれば、民衆が勝手に暴れだし、政治体制を混乱に陥れることができる、ということである。
 他国の誰もできないが、日本だけにはそれができる、ということである。


 wikipediaより。

 一般的に「パブロフの犬」としてよく知られる実験である。
 犬のほおに手術で管を通し、唾液の分泌量を測定した。
 ベルを鳴らしてからエサを与える事を繰り返した結果、ベルを鳴らしただけで唾液を出すようになった。

 さらにベルを鳴らし続けると次第に反応は消えていくが、数日後同様の実験をしても犬は唾液を分泌する。
 前者を『消去』と言い、後者を『自発的回復』と言う。

 なお「パブロフの犬」というと単数の印象を受けるが、実際には数百頭いたらしい。




レコードチャイナ 配信日時:2012年9月26日 10時55分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=64975&type=0

<尖閣問題>
”冷静な反日行動“呼び掛けると売国奴呼ばわり
=それは真の「愛国」か―中国紙


●25日、日本への抗議活動が広がる中国では、愛国心について自分と異なる意見を持つ人を「漢奸(裏切り者)」と呼び、理不尽に攻撃する人たちが増えているという。写真は反日デモで「売国奴」と決め付けた同業男性をビンタした北京の大学教授、韓徳強氏。

 2012年9月25日、中国青年報は、尖閣諸島の国有化をめぐり日本への抗議活動が拡大している中国で、愛国心について自分と異なる意見を持つ人を「売国奴」と呼び、理不尽に攻撃する人たちが増えていると伝えた。

 反日デモに参加した北京航空航天大学の韓徳強(ハン・ドーチアン)教授が、同業の高齢男性を「売国奴」と決めつけ、ビンタを2発浴びせるという事件が先週発生した。
 この教授は殴った理由について、
 「あの老人は裏切り者。殴られて当然だ」
と自身のブログで堂々と説明している。

 このように最近、自分とは異なる意見や論調を「愛国ではない」と声高に批判し、「冷静に理性的に行動しよう」と呼びかける声や日本製品不買に反対する声に「売国奴」のレッテルをはり罵倒するコメントが、ネット上のあちこちに書き込まれている。

 しかし、日本に抗議し、日本製品をボイコットし、デモに参加するだけが愛国なのだろうか?
 日本との開戦に否定的で日本製品をボイコットせず、デモに参加しないからといって、その人が愛国ではないと言い切れるのか。
 愛国には色々な表現方法がある。
 仕事に励むのも他人を助けるのも、税金を納めるのも立派な愛国行為である。

 愛国の目的は、国家の平安と国民の幸福であるべきだ。
 これほどグローバル化が進んだ時代に、自国製品以外のものを購入したからといって攻撃される国民が幸福であるわけがない。
 そもそも国家利益とはなにか。それは領土や国家主権を守るだけでなく、同胞である国民の権利を守ることも含まれていなければならない。

 最近の「売国奴をやっつけろ!」といった風潮が社会に蔓延することはないと信じている。
 だが、その狭量で過激な考え方には注意と警戒が必要だ。




サーチナニュース 2012/09/26(水) 16:34
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0926&f=politics_0926_027.shtml

意見違えば「裏切り」と決めつける愛国の亡霊=中国青年報
        
  25日付中国青年報は、
 「<漢奸(漢族の裏切り者、奸は姦と通用)>のレッテル貼りの下にいる極端な亡霊」
と題する論説を掲載した。
 北京航空航天大学の漢徳強教授が対日抗議デモに参加した際に、異なる意見を示した高齢者にビンタし、
 「漢族の裏切り者なので一掃したのは感情的にも理屈面でも正しい
と主張したを取り上げ、排他的な「愛国」を批判した。

  韓教授は、日本への抗議表明に故毛沢東主席を持ち出したことを批判する80代の男性をビンタで殴った。
 インターネットなどで批判の声が出ると、
 「「私は人を殴ることに一貫して反対してきた」
とした上で、
 「日本のために裏切り者になる者に遭遇すれば、我慢することは絶対に出来ない」、
 「私は法律にもとづいて罪を認める。しかし絶対に過ちだったとは認めない
と反論した。

  中国青年報の記事は、尖閣諸島の問題で対日批判が高まったことで、一部の人が
 「自分の愛国の熱情を表明すると同時に、自分と異なる論調に対してはすべて『愛国でない』として排斥する」
と指摘。
 日本に対して冷静に対応すべきと主張したり、日本製品のボイコットに反対する人を無責任に「愛国でない」、「売国奴」、「裏切り者」と決め付けると批判した。

  さらに、自らと異なる主張を「裏切り者」などと決め付ける考え方については
 「国民は常に、警戒せねばならない」、
 「なぜなら、よく似たロジックや考え方の方式は、それほど古くない過去に、似たようなことがあった。
 国民はそのために、重い代償を支払わされることになった。
 今なお、残された毒は引き続き害悪をなしている」
と指摘した(解説参照)。

  記事は、
 「愛国の表現方式は人ごとに異なっていてもよい」、
 「それぞれが選択してよい」
と主張。
 「人助けが好きで、同胞を大切にするならば、対日強硬論を唱えなくても、愛国だ」、
 「たとえ国家のために命を投げ出すことまではせずとも、仕事に励み、きちんと納税しているならば、それも同様に愛国だと言ってよい」
と、善良な市民であるならば、愛国的と呼んでかまわないとの見方を示した。

  愛国の目的については
 「国家がもっとすばらしくなることではないか。
 国民生活がもっとすばらしくなることではないか」
と問いかけ、
 「国家の利益維持と国益について異なる意見を持てば“売国”や“裏切り者”と蔑(さげす)まれ、経済が全地球化しているのに国産ブランド以外の品を買えば、他人に破壊される危険に直面する。
 これは、あきらかに幸福な生活の中にあってよいことではない」
と論じた上で、同胞の公民権を守ることは、領土と国家主権を守ることと同様に
 「神聖、不可侵な国家利益を守ることだ」
と主張した。

  記事は最後の部分で、
 「裏切り者を一掃せよ」
などとする主張について
 「一部の者が騒いでいるだけ」、
 「非主流の風潮」、
 「社会に大きな害悪を及ぼすには至らないと信じる」
と論じた上で、
 「その背後には狭隘(きょうあい)で極端な亡霊がいる。
 われわれはいつも、警戒して反省せねばならない」
と、人々に「愛国」の本質について改めて考えるよう求めた。

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◆解説◆
  「自分と考え方が異なるだけで、裏切り者と決めつける現象があった、それほど遠くない過去」
とは、文化大革命時期などを指すと考えてよい。
 権力闘争で、政敵に「階級の敵」とレッテルを貼り、追い落とす現象が見られた。大衆も、それに乗せられた。

  中国青年報は、中国共産主義青年団(共青団)の機関紙。
 共青団は胡錦濤国家主席の支持母体。
 1953年から78年までトップの第一書記を務めた胡耀邦(共産党総書記)の流れを汲み、日本とは融和を目指す考えが強いとされる。
 胡耀邦総書記は、“日本の過去の軍国主義者”についても
 「あまりにも狭い考えで国を誤ったが、(本来は日本における)愛国主義者だった」
などと、公式の場で異例の発言をしたことがある。




「ここに日本政府に丁重に警告する」 



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