2012年9月26日水曜日

日中経済貿易の冷え込み:日本に経済リスク、中国に政治社会リスク

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サーチナニュース  2012/09/26(水) 20:16
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0926&f=politics_0926_032.shtml

日中の「政冷経涼」、日本政府の下手な策=中国報道

  中国網日本語版(チャイナネット)は26日、「日本で見た日中間の『政冷経涼』、民間は長期化を憂慮(ゆうりょ)」と題する記事を掲載した。以下は同記事より。

  「中国はこれまでのような日中間の『政冷経熱』関係にはもう我慢(がまん)できないだろう。」
 日本政府の釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)購入事件を発端とする領土問題が過熱するなか、日本の世論はとうとうこのような認識に立った。

  日中間の「政冷経熱」という考え方は、2005年、当時の首相だった小泉純一郎氏が靖国神社を参拝したときまでさかのぼる。
 中国は当時、制裁措置として日本からの対中輸出を約5%、対中投資を3割削減した。
 だが、今回の領土問題による対立は「政冷経熱」関係を「政冷経涼」に変えた。

  日本が観光、交通などの産業で対中投資で得ている利益、対中輸出などの大口収入は軒並み打撃を受けている。
 この釣魚島問題にまつわる問題がどこまで続くのか、日本の経済界と大多数の市民感情はかなり複雑だ。
 日本経団連の米倉弘昌会長は、
 「日中の企業と民間が大変な思いを積み重ねて創り上げてきた友好関係」
を深く傷つけたと日本政府を批判した。

東京と沖縄で感じる日中経済貿易の冷え込み

  中国による報復措置によって、日本はプレッシャーが長期化することを予感している。
 中国メディアの環球時報は最近、東京・銀座にあるブランドショップに立ち寄り、中国人観光客で商売が繁盛していた状況から一転、中国人の人影のない寒々とした状況について報じた。
 あるブランドショップは、
 「ブランドショップはもっとも直接的に日中関係の危機を感じる場所で、いつこの問題が収束するのかわからない」
と嘆いた。

  客足が大幅に減るなか、日中の大手航空会社は便数削減を迫られている。
 環球時報の沖縄取材では、那覇空港の国際便ロビーには以前のような活気はなく、中国の海南航空は北京―沖縄路線をすでに停止していることがわかった。

  中国からの観光客を主に扱っていた旅行会社の中国業務スタッフは、手持ち無沙汰な様子だ。
 東方航空の日本駐在員は、定期便の予約数を見ると、路線の継続も難しいという。
 同様に、日本航空、全日空も便数削減に踏み切り、キャンセルはすでに3万人以上になっている。

 日本の一部メディアは、日中関係の悪化は長期化が避けられない情勢だと見ている。
 産経新聞21日の報道では、日本の貿易収支は2カ月連続で赤字となったが、釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)問題は今後も日本の対中輸出をさらに減少させ、長期化傾向にあることから、対中輸出は大幅に減少することになるだろうと報じた。

日中間の経済貿易交流が中断を余儀なくされる

  日中経済協会は本来25日から28日にかけて中国訪問を予定していたが、キャンセルとなった。
 これは1975年以来初めての中止である。毎年、この代表団に参加しているのは、トヨタ自動車の会長や経団連会長など日本経済界の要人ばかりだ。

  領土問題を発端とする緊張関係から、中国国家旅遊局はすでに日本で開催される国際観光展への参加を取り消した。
 日本の観光業界関係者はなすすべがなく、共倒れを懸念する。
 シンガポール紙・聯合早報は9月22日の論説で、
 「日中民間交流は領土主権問題の影響を受け、日本では中国排斥ムードが高まっている。
 『仙台市が中国に擦り寄っていると誤解されたくない』との懸念から、仙台市は日中友好のシンボルであるパンダの受け入れを拒絶した」
と報じた。

日本の政治家は日本企業の恐怖や痛みがわからない

  日本では、大阪人はもともと「商いに熱心」で有名だ。
 日中の摩擦が引き起こした「政冷経涼」に意見がある大阪人は多い。
 大阪商船三井のある管理職は、野田政権は
 「長期的展望がなく、自分たちの大切な利益をどうやって守ったらいいのか知らず、日本経済を犠牲にして、つかの間自分の首相の椅子を守っている」
と辛らつだ。

  環球時報は大阪門真市で、今年65歳になるプラスチック製品会社社長を取材した。
 日中間の「政冷経涼」関係の現状についての考えをたずねると
 「日本の政治家が悪い。
 自分の行く末ばかりを考えて、大局の大切さをわかっていない。
 恥ずかしいことだ」
と答えた。
 彼は、中国経済が上り調子であるときに、日中経済が冷え込むことは、中国にとってもマイナスではあるが、中国は耐えられるだろうと見ている。

  「しかし日本にとって、最大の輸出先は中国だ。
 両国の経済が長期にわたって冷え込めば、日本経済の衰退はさらに加速するだろう。
 日本企業は中国よりも大きく、良い市場を探しだす前に、突然中国という市場を失ってしまった。
 この恐怖と痛みは、日本のビジネス界の人びとはわかっても政治家にはわからない」
と述べた。

 日本の政界の大御所である野中広務氏は1998年から99年にかけて内閣官房長官を務めたものの、政客から公職選挙法で責められた人物だ。
 野中氏は、現政府を釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)問題で誤った判断をして日中両国関係を著しく傷つけたと批判した。
 日本のソーシャルネットサービスで、野中氏の発言は大きな反響を呼び、多くのネットユーザーは中国にこびていると糾弾した。

  日本の著名な映画監督である岩井俊二氏も、日本が中国に侵略戦争をしたことに触れ、
 「侵略された国の怒りは当然だ」
と日本は相手の立場を考えるべきで、日本のメディアは中国の悪いところばかりを報道しすぎると批判した。
 彼もネットで多くの攻撃を浴び、彼の発言は中国側に立っており、売国行為であると批判された。

  野中氏などの人びとの中国に対する謝罪の言葉を聞いて、大阪門真市の社長は「彼らは多くの日本人から攻撃されるだろうが、私は彼らの意見が正しいと思っている」と述べた。

  アジア太平洋地域の国際関係を専門とする日本人研究者である仲村澄世さんは、24日、環球時報の取材にこたえ、日中間の「政冷経涼」関係について語った。
 「日中経済の持久戦は日本にとって不利だ。
 日本に狙いを定めて攻撃しようと中国がこのカードをきれば、日本はさほど長い間耐えられないだろう。
 中国にいる日本企業や日本国内の経済界から野田首相を批判する声が高まることは間違いない」
と分析する。

  日本はこれまで伝統的な考えで、日中関係では政治と経済を分離して捉えてきた。
 政治が靖国参拝問題などで冷え込んでも、経済はそのまま交流が続いていた。
 だからこそ、日本の財界はあまり政府に対する意見交換やプレッシャーを重視せず、力を入れてこなかった。

  日本の経済産業省の統計によれば、中国には日本の企業法人が5000社あまりあり、海外にある日本法人の3割を占める。
 ここからも日本企業の中国市場に対する依存度がわかる。
 現在、日本政府が打った下手な策が、日本経済界や民衆の不満をすでに巻き起こしている。


 日本の中国への依存度は大きい。
 しかし、日本企業とて利益の確保より人命危機の回避が優先する
 もし、その手立てを打っておかずに何かあったときは、その企業はイメージダウンだけでなく、会社の存続にまで責任が及ぶことになる。
 保険費は高騰するであろうし、場合によっては拒否されることもありうる。
 また昨今の世界経済不況により、中国での人件費上昇はもはや中国を生産拠点とするに足りるほど条件がいいとはいえなくなりつつある。
 ために今回の事件で日本企業は目の前に宝の山が眠っていることが分かっても、中国への進出を控え、他の国へのシフトを実行していかざるを得ない。
  見た目は日本が経済リスクを負っているように見える。
 だが今回の件は
 間違いなく中国が日本人にとって安全な場所でない
ことを認識させ印象ずけた。
 このため
 ソロバン勘定ではなく、心理的に企業は中国偏重に二の足を踏まずを得なくなる。
 日本は中国に対して大きく考え方を変えざるを得なくなってしまったのである。

 日本人は中国に対して明らかに用心深くなるだろう。
 覆水は盆にかえらない。
 僅かな危険でも感じ取ったら、諸々のプランを中止する可能性が大きくなる。

 このことは、少し長期の視点でみると中国が政治的危機を背負い込むことにもつながる。
  日本企業のこれまでの中国へののめり込みが大きければ大きいほど、
 動きの変化がもたらす中国政治へのダメージは大きい。
 中国にとって経済的な問題はたいしたことではない。
 問題は社会不安を誘発することの危険性だ。
 仮に日本企業の半分が中国を撤退するとなると、中国に失業危機がもたらされる。
 失業者の増大は政府への不満となって表面化する。
 「職よこせ」は巨大な暴動を誘発することもありえる。
 
  単純に言えば、今回の件は
 日本に経済リスクを、
 中国に政治社会リスクを

もたらしたということである。
 中国政府がこれまでの態度を一転させて「棚上げ」といったことで、早急な解決をはかりたいのは、
 日本企業の逃亡をできるだけ食い止めたいという思惑があるからである。
 当局はなにしろ、失業者の増大が、最も怖いのである。
 何時にあっても何処の国であっても、ほとんどの政治暴動の背景には必ず失業者の増大による社会不満という要因が絡んでいる。
 できるかぎり、失業の増大を抑えねばならないのである。
 社会不安、暴動のタネを摘み取っておきたいのである。
 それが中国当局が存続していく条件でもある。




「ここに日本政府に丁重に警告する」 



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