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● 領土問題をめぐる抗議の張り紙(9月18日、武漢の日系企業で)
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ウォールストリートジャーナル 2012年 9月 27日 15:16 JST
http://jp.wsj.com/Opinions/Opinion/node_519854?mod=WSJ3items
【オピニオン】
空威張りの中国―自国の首を絞めるだけの経済制裁は恐れるに足らず
中国は以前にも増してその経済力を戦略的な目的で振りかざしているようだ。
直近の標的となっているのは尖閣諸島の領有権問題で関係が悪化している日本である。
日本製品の通関手続きや日本人へのビザ発給に遅延が生じている。
特に日本車などに対する不買運動を心配する声もある。
日本企業がこうした経済制裁を不安視するのもわかるが、今のところは少しゆったりと構えていられそうだ。
と言われても、日本人からするとにわかには信じられない話かもしれない。
中国は今や日本にとって最大の貿易相手国であり、シティ・リサーチによると2011年時点で、
日本の輸出高の24%を占め、日本から中国への投資額は63億ドルに上っている。
日中関係がここまで発展するのには長い年月がかかった。
10年前、中国本土にある日本企業の子会社の売上高は、中国本土での売上高、日本への輸出高、第3国への輸出高でほぼ3等分されていたと調査会社キャピタル・エコノミクスは指摘する。
それが今では、中国本土での売上高が円ベースで日本への輸出高の3倍、第3国への輸出高の6倍にまで急伸している。
こうした数字は中国の不買運動が日本企業の収益に大きな打撃を与え得ることを示している。
国内市場が停滞していることもあり、日本企業は債務返済、研究開発、国内での設備投資、株式配当のための資金源として海外市場の売上高にますます依存するようになっている。
英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)によると、中国で事業を展開する日本企業は2010年に総額で4980億円の配当を支払ったという。
だとしたら、中国政府による経済制裁に慌てふためくべきなのか。
いや、必ずしもそうではない。
日中間の経済競争においてキーワードとなるのは「相互依存」なのである。
RBSによると、日中の経済関係は過去10年間に規模が拡大したばかりでなく、その内容も劇的に変化したという。
日本企業はかつて、安い労働力を利用するためだけに中国に材料を送り、製造したものを他国で売っていた。
ところが今日、中国本土にある日本企業の子会社は原材料の3分の2を中国で調達し、
作られた製品の4分の3を現地で売っているのだ。
こうした現状を踏まえると、中国本土にある日本の工場や小売店は本当に「日本企業」なのかという疑問さえ生じてくる。
中国産の材料が使われた中国人消費者向けのシャツ、家電などが中国人従業員が働く工場で、中国メーカーのものよりも高い品質水準で製造されているのだ。
日本の製造業者は今や中国のサプライチェーンにすっかり組み込まれている。
RBSによると、中国における日本企業の売上高の約3分の1は「卸売り」だという。
その広義のカテゴリーには部品のような企業間取引も含まれる。
そして、売上高の25%を化学製品、電気機械、情報通信機器、鉄鋼といった包括的なカテゴリー「その他の製造業」が占めている。
こうした製品の多くは、中国が自らの発展のために必要としている材料や資本財である。
中国がまだ独自に製造できないハイテク機器の部品などについては、特にその傾向が強い。
日本にとって中国は重要な市場であり続けるだろうが、唯一の市場というわけではない。
日本企業の子会社による製造品と非製造品の両カテゴリーの売上高で中国は4位にランクされている。
キャピタル・エコノミクスによると、北米地域、中国を除くアジア地域の売上高はそれぞれ円ベースで中国の2倍近くとなっており、それに続く3位は欧州だという。
日本企業の中国での持続的な業績不振は、日本にとっても中国にとっても問題となる。
それでも日本は、中国が分別を取り戻すまで待つことができるだろう。
中国政府の一部が考えているよりも長く待てるかもしれないのだ。
日本はもちろん、米国、中国に続く世界第3位の経済大国であり、先進国水準の1人当たりの国民所得と数十年に及ぶ工業化を成し遂げている。
こうしたことは中国のかんしゃくを乗り切る上で強みとなるはずだ。
しかし、中国に対してこうした強みを持っているのは日本だけではない。
この春、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)に侵入した中国漁船に対して強気な対応をしたことで、フィリピン政府は中国の怒りを買ってしまった。
中国政府はフィリピン産バナナの輸入を停止し、旅行者には同国への渡航を自粛するように促した。
相対的な大きさからしてもこれは不公平なケンカに思える。
とはいえ、直近の四半期におけるフィリピン経済の成長率は年率5.9%だった。
この数字は期待を下回るものだったが、その原因は中国の対抗措置ではなく、農産物の不作にあった。
中国の制裁で打撃を受けた産業もあるが、人気の大統領が外国投資や国内消費にさらに弾みをつける一連の改革を実行していることもあり、今のところ経済全般は好調である。
中国政府はその経済的影響力を見せつけることに失敗したのである。
一方のフィリピンには、中国政府が渇望する天然資源が豊富にあり、フィリピン政府はその開発にますます意欲を見せている。
こうした状況で、中国がフィリピンに対する制裁を長く継続することなど果たしてできるだろうか。
その戦略的な苛立ちを外国企業に向けることで、中国は他国と自国の経済に大きな打撃を与え得る。
しかし、そうした影響力の行使には代償がつきものである。
だからこそ、
成熟した大国は、相応の事情がない限り、影響力の行使には出ない。
軍事的にも経済的にも大国とは言えない中国にこのような不機嫌な態度を取る余裕などないはずだ。
(筆者のジョセフ・スターンバーグは、ウォール・ストリート・ジャーナル・アジアのコラム『ビジネス・アジア』のエディター)
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「ここに日本政府に丁重に警告する」
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